不動産担保評価とは
不動産担保評価とは、金融機関が不動産を担保として融資を行う際に、その不動産の価値を査定する業務のことです。ここでは、不動産担保評価の目的と方法を詳しく解説します。
不動産担保評価の目的と概要
不動産担保評価には、融資実行前に担保物件の価値を適切に見積もることで、融資金額に見合った担保価値が確保されているか確認し、貸し倒れリスクを抑える目的があります。評価は通常、不動産の所在地や面積、権利関係などの基本情報に加え、周辺の地価や市場動向を踏まえて行われます。
不動産担保評価の方法
次に、不動産担保評価の具体的な方法をみていきましょう。
評価に必要な基本情報の収集
不動産担保評価を行う際には、さまざまな情報を収集して所定の計算式に当てはめるのが一般的です。例えば、対象土地の路線価(国税庁が公表する基準値)や公示地価(国土交通省が公表する標準価格)を調べ、近隣の売買事例(取引事例)やその土地の用途地域(都市計画上の区分)などを確認します。
登記情報の確認と担保評価額の算出
収集した情報をもとに、登記事項証明書など登記情報から得られる土地・建物の詳細(面積や権利関係)を加味し、評価基準に従って担保評価額を算出します。通常、このような評価作業は本部の専門部署へ依頼して行うケースが多く、正式な評価結果が出るまでに数日を要することもあります。
なお、不動産担保評価には営業店で行う簡易評価と、本部の専門部署や不動産鑑定士が行う詳細評価があります。営業店で事前に概算額を把握できれば、本部への正式な評価依頼の効率化につながり、審査を迅速に進められます。
不動産担保評価における3つの課題
次に、金融機関の不動産担保評価業務において、課題になりやすいポイントを3つ解説します。
課題1|業務にかかる時間と手間の問題
まずあげられる課題が、業務に時間がかかることです。評価に必要な情報は多岐にわたり、それぞれ別のシステムや資料から手作業で収集する必要があります。その結果、書類作成やデータ入力に手間がかかってしまうのです。さらに担当者の知識や経験が浅い場合には不備やミスが生じるリスクも高まります。
課題2|紙ベース作業による負担
紙ベースの作業負担も大きな課題です。不動産の登記情報や評価書類を紙で管理し、手書き・手入力で作成している場合、営業店の負担は大きくなります。こうした作業に時間を取られることで本来注力すべき営業活動の時間が圧迫されるという問題もあります。
課題3|営業店と本部間の連携の煩雑さ
さらに、営業店と本部の連携の煩雑さも指摘されています。営業店で収集・作成した書類を本部の審査部署に送付し、そこでチェックや評価が行われますが、入力ミスや情報不足があると差し戻しが発生し、修正・再提出に時間を要します。このやり取りにより評価完了までに日数がかかり、案件の規模に関わらずお客さまをお待たせしてしまう状況が生じてしまうのです。特に融資を急ぐお客さまにとって、不動産担保評価に時間がかかることは大きなストレスになります。
不動産担保評価を効率化するためのポイント
上記の課題を解決し、不動産担保評価の効率化を進めるには、業務プロセスの見直しとデジタル技術の活用が有効です。ここでは、いくつかの具体的なポイントを紹介します。
情報収集のデジタル化を進める
各種の情報を紙ではなくデジタルデータとして入手・共有することで、情報収集の手間を削減できます。例えば、路線価や公示地価などの公的データはWeb上で公開されています。また、法務局の提供する「登記情報提供サービス」を利用すれば、不動産の登記情報(登記事項証明書)をオンラインで即座に取得することが可能です。
評価の自動化と情報共有の最適化を図る
さらには、情報収集後の評価フローの自動化と、部署間の情報共有の最適化も欠かせません。例えば、AIツールを活用すれば、不動産の基本情報をツール上で入力することで、担保評価額を瞬時に自動で算定するといったことが可能です。また、クラウドプラットフォームを使用すれば、複数の部署・担当者間で情報をリアルタイムで共有できるでしょう。
「オンライン登記情報システム」を活用する
上記を包括的に行えるのが、ホームズの「オンライン登記情報システム」です。これは、不動産の登記簿情報をオンラインで取得すると同時にAIでデータ化し、他の業務システムと連携できるようにする仕組みです。
「オンライン登記情報システム」では、取得した登記情報を即座に解析・データベース化し、さらに行内で共有することで、二重取得を防ぎつつ既存の担保評価システムへ自動連携できます。従来は手動で行っていた「評価帳票への入力作業」の大幅削減につながり、登記情報の判読や担保台帳の作成もAIが自動で行うため、複雑な権利関係の読み取りミスや入力ミスの防止も期待できます。担保評価業務全体のスピードアップと精度向上に役立てられるサービスです。
不動産担保評価の効率化事例《3選》
ここでは、実際に「オンライン登記情報システム」を活用して担保評価業務を効率化した金融機関の事例を紹介します。
事例1|営業負担90%削減を実現した不動産担保評価DX
A銀行様では、従来の紙ベースによる不動産評価業務をデジタル化し、業務コスト削減を実現しました。
【導入前の課題】
・紙中心の評価業務による非効率性
・営業店での担保評価関連業務の重い負担
・評価結果の回答までの長時間化
【導入成果】
・営業店での担保評価関連業務負担を約90%削減
・年間1万時間相当の業務時間短縮を実現
・本部集中審査部署の担保評価業務効率が50%向上
・登記情報二重取得防止により年間335万円のコスト削減
・評価結果の回答時間を8営業日から最短当日中に短縮
事例2|司法書士依存からの脱却で業務スピード向上
B銀行様では、従来の司法書士への登記情報取得依頼から、自社システムによる迅速な情報収集へと、大きな転換に成功しました。
【導入前の課題】
・登記情報取得を司法書士依頼することによる1日以上のタイムラグ
・住居表示から地番を特定する作業の長時間化
・手入力の契約書作成による工数圧迫と入力ミス
【導入効果】
・担保評価業務を年間で約800時間削減(「ホームズ地図システム」を活用)
・契約書作成を効率化し約70%を削減(「契約書自動作成システム」を活用)
・司法書士手数料の削減に加え、二重取得防止機能や登記情報の全店共有により、年間経費1,500万円のコストカットに成功
事例3|多面的なシステム連携により包括的に効率化
C銀行様では、不動産評価業務における複数の課題を、統合的なシステム導入により解決しました。
【導入前の課題】
・登記情報の行内共有不備による二重取得の発生
・住居表示から地番を特定する作業における時間的ロス
・手入力による契約書作成の非効率性
・人的チェック工程の多重化
【導入効果(見込み)】
・登記情報取得件数を10〜15%削減できる見込み(「オンライン登記情報システム」の二重取得防止機能を活用)
・住所から地番を特定する作業を年間約1,000時間削減できる見込み(「ホームズ地図システム」を活用)
・契約書作成業務を年間約5,000時間短縮できる見込み(「契約書自動作成システム」を活用)
まとめ
不動産担保評価は金融機関の融資業務において欠かせない重要なプロセスですが、多大な手間と時間を要し、ミスが起こりがちな側面もあります。そこでオンライン登記情報システムのようなツールを導入すれば、情報収集から評価算出までのプロセスの自動化や、人手による作業を減らすことでミスの削減が見込めます。
不動産担保評価を短時間で効率的に行う鍵は、「正確な情報を迅速に入手し、システムで処理する」ことにあります。今後ますますデジタル化が進む中で、これらの手法を取り入れることで業務効率化とサービス向上の両立を目指しましょう。